oncan ネオンによる身近な照明

工房BLOG

oncanのネオン職人 山本祐一によるブログネオンについての豆知識から活動のお知らせなど

書棚のネオン 其の7/角田光代 紙の月

category : neonのこと, おすすめのネオン

最近、甥っ子の課題図書を求めて大型書店に出かけると、話題の芥川賞受賞作品を求めるお客さんを見かけます。暑い日が続く、この季節は案外読書に向いているのかもしれないと思ったり。

このところ、実用書以外をじっくり読む機会が無かったのですが、先日やっと読めずに買い溜めていた書棚から 角田光代さんの小説「紙の月」を読みました。お話は、41歳の主人公の主婦がパート勤務で銀行に勤めるところからはじまります。角田さんの文章は、その主人公と彼女を取り囲む人々の視線で、次々と展開し 一つの事象の持つ環境や心理の構成を浮かび上がらせます。それぞれの登場人物のもつキャラクターに共感したり反発したりしながら読めるので、個人的には読み易く感じます。

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以前から文字で表れる「ネオン」のことが気になっていました。ちょうど、この作品には、数回「ネオン」「ネオンサイン」が登場し、そのたびに「どんなネオンなのだろう」と想像するのは、職業病です。主人公は、つましく日常を暮らしてきた主婦。それまでの生活では、「ネオン」が輝く世界は、遠かったのかもしれません。その遠かった、華やかな雑踏やきらびやかで猥雑にさえ感じる繁華街が「ネオン」「ネオンサイン」という言葉で舞台風景を想像させます。

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思っているよりも、ネオンという言葉が出てくるので、「もしかしたら映画もネオンが沢山でてくるかな?」と宮沢りえさん主演の映画も見てみました。こちらは登場人物(特に主人公を取り巻く人々)に設定変更があり、またネオンサインではなく場面の明るさや、照明の色でストーリーが展開していました。ネオンを確認出来なかったのは寂しい気もしましたが 映像と文章の違いや人物の設定の違い、それによるディティールを味わうのも面白かったので、是非とも読み比べ、見比べてみるのをお勧めします。

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「ネオン」の言葉を再確認する為にページをめくると、沢山のカタカナ語があるなと再度関心。ネオン屋の私達が「ネオン」という言葉に敏感なように、「ワイン」という言葉に敏感な酒屋さん、「ホテル」という言葉に敏感なコンシェルジュさん、と沢山の単語の向こうに関わる専門家がいるんだろうなと想像してしまいます。

節電の夏、「ネオン」と呼ばれる「夜景」や「電飾看板」たちに戸惑う事もありますが、そうやって共通の風景を浮かび上がらせる「ネオン」という言葉も誇らしいと思ったりもするのです。